それが彼との出会いでした。
それから時は流れ、同じ職場となり毎日顔を合わせるようになりました。業務上、連携することが多く、職位は同じ、年齢もそう違わなかったこと、そしてなによりも彼の強面から時折覗かせる屈託のない笑顔のおかげですぐに打ち解けることが出来ました。
お互い時間を見つけては他愛のない話題に花を咲かせました。共に過ごした時間は多くはなかったかもしれませんが、僕にとって気の置けない同僚の1人でした。
彼との会話で特に記憶しているのは、彼の次男くんの話題です。当時、小学生だった次男くんは、興味を持ったことにあたり構わず没頭するらしく、そんな彼にまつわる幾つかのエピソードを面白おかしく語りながら、息子のそばに出来る限りいてやりたいんだと話していました。そのとき彼が家族を大事にする父親に映りました。ただし言動が一致していたかは定かではありませんが・・・。
いつしか彼は起業を決断し職場を去ることになりました。それとなく聞かされていたのですが、その実行を知った時は尚早ではないかと思いました。
当時の職場は新しい体制で立ち上がってまだ間もなかったこともあり、ちょっとしたことで揺らいでしまうような脆弱さがありました。そんな中だったからこそ卒なく業務を遂行する彼の存在は大きく、彼を失ってしまうことは組織にとって大きな痛手に感じました。しかし彼が考え抜いた上での決断だということを良く知っていたので気持ちよく送り出すことにしました。そんなとき彼は僕に忘れられない一言を放ったのです。
当時の職場は新しい体制で立ち上がってまだ間もなかったこともあり、ちょっとしたことで揺らいでしまうような脆弱さがありました。そんな中だったからこそ卒なく業務を遂行する彼の存在は大きく、彼を失ってしまうことは組織にとって大きな痛手に感じました。しかし彼が考え抜いた上での決断だということを良く知っていたので気持ちよく送り出すことにしました。そんなとき彼は僕に忘れられない一言を放ったのです。
「あなたのような人がいればこの組織はきっと大丈夫」
信頼を寄せる彼からのその台詞が、後の僕の原動力になったことは言うまでもありません。
昨年12月、遅ればせながらお見舞いに伺い、久しぶりに顔を合わせて近況報告をたっぷり話すことが出来ました。また期せずして成長した次男くんともお喋りすることも出来ました。彼の横たわるベットを挟んで盛り上がる僕らを見つめ、相槌を打っていた彼の姿をつい昨日のことのように想い出すことが出来ます。
退院したら見舞いに来たみんなの処へ自分から挨拶に行くんだ、という彼らしい目標を聞いて安心しました。きっと近いうちに、よう!とか言いながら少しはにかんだ表情で僕らの前に現れるのだと信じていました。
これから彼のことを想い出したときこそ、彼が会いにきてくれた時だと思うことにします。
安らかに眠ってください。
合掌。