今期のOWSは4月の宮古島トライアスロンからだった。季節がら海でのスイム練習はできる筈もなく、さりとて現地入りしてから試泳するでもなく本番に臨んだ。
結果は自己ベスト、好条件が作用したことはもちろん、そこに至るまでのプールでの練習、例えば壁ターンキックなし縛りなんかが役に立ったのかと気をよくする。
さて、この大会は宮古島と同距離の3,000m。2週前対策練として地元の海をウエットスーツを着用して泳いだので今年3度目のOWSだ。佐渡トライへ向けた海錬という位置づけは変わらないが時計短縮への期待感が少なからずあった。
会場の佐和田海水浴場は湾になっていて、風がなければ朝の時間は海面は静かで澄明だ。陽が昇り時間が経つと空気が温まって風が出て波が立つ。岸を背にして左方向へ潮流が強まったり、時折大きなうねりが立つのがこの海の見立だ。佐和田の海を泳ぐようになってから、海というのは刻々と表情を変えていくものなのだと知った。
3,000mの部は4番ブイ手前の水中スタートだった。沖に浮かぶ1番ブイまで650m。ピンクのキャップを被ったゲストの松田さんの背中がひときわ大きく見える。号砲が鳴り、ぼくらは一斉に群青の海を掻いた。
泳ぎ始めというのは呼吸が整うまで辛抱が必要だ。そこへ潮の流れからくる進行方向の修正や、ほかの選手との接触なんかもあって弱気な心が顔を覗かせることもしばしばだ。そういったことすべてを含めて、ぼくは海を泳ぐのが好きなのだ。
沖の2番ブイを目指すころには呼吸が落ちつきネガティブな考えは薄れていった。そして掻きはもとより、身体動作に意識を回して気持ちよく泳げていることを歓喜した。
道中は割愛。終盤2周目の岸を目指す場面、ぼくは早い位置からピッチを上げることに心を砕いた。うねりに翻弄される場面もあったがペースは上がり少し息が苦しくなる。緩急をつける。そんな頑張りのせいかフィニッシュまであと50mぐらいのところで右のハムが激しく攣った。前日のバイク錬のあと攣りまくっていたので、きっとくるだろうと思っていたが最後の最後にきた。岸に上がり右脚を引きずるようにfinishゲートを通過した。
時計は1時間と2分弱。前回(2023年大会)は58分台でフィニッシュしていたので自己申告タイムは堂々の1時間切り、紺色のキャップで臨んでいた。吐露すれば落胆しかないが、無事完泳したことが勝って心が広くなった。とはいえ1時間を切れなかった考察は欠かせない。根本的な技術の問題は挙げたらキリはないが、目標に対しての直進性、蛇行やジグザグ泳といった無駄な泳ぎが時計の枷になったことは明白だ。
OWSは目標物へ直進する泳力が求められる。進行方向の視認不足。ヘッドアップをおろそかにして目標を見失うことが幾度となくあった。3年前の2022年大会でやらかした、ブイの誤認の教訓があったので自信のないときは連続してヘッドアップした。視認の引き出しはそう多くはないが、ブレスで長めに息を吸って、しっかり息を止めて顔を上げるといった基本的なことを徹底。顎を引いて顔を上げるのを最小にすると盛り上がる水面が邪魔をして目標物が確認できなので、いつも以上に体をつかって顔を上げた。クロール技術の向上はもちろんだが、状況変化のなかで目標への直進性を担保する技術を獲得しなければならない。
さて。今回も滞在中に佐渡の皆さんからさまざまなもてなしを受けた。心から謝意を表したい。ぼくの図々しさがポジティブに反応している数少ない例で、彼らの存在が佐渡訪問の意欲につながっている。これからも大切にしたい繋がりだ。
帰路のフェリー出港の際、住吉地区の方々による鬼太鼓(オンデコ)舞によるお見送りがあった。「また来いっちゃー」と岸から声が上がると、こちらのフェリーからも「またねー」と声が返されて皆手を振っていた。ぼくらを乗せたフェリー船はゆっくりと港を離れていく。
また来月練習を兼ねて佐渡を訪れる予定、楽しみである。(了)