今年2026年の佐渡Aタイプは、スイムの安全性を確保できないことを理由に、1周1kmのコースを2周する2kmにスイムは距離が短縮され、バイク190km、ラン42.2kmの合計234.2kmで開催された。
自称トライアスリートを名乗るとき、その誰もが意識するクエストが国内最長の佐渡トライアスロンAタイプである。ぼくは今のいままで出場する勇気を持てず、おおよそ半分の距離のBタイプに参加してきた。しかし昨年のBのバイクパート中に突如「Aへの挑戦」を決意した。
降り注ぐ陽射しが小佐渡の海原に反射して、キラキラ輝いて眩しかったのを覚えている。裡に秘めるA参戦への想いに、何故そのタイミングで腹を括れたかはよくわからない。脳内麻薬のなす衝動だったのかもしれない。
Aタイプ出走準備として手始めに行ったのは機材購入だった。昨年11月にバイクの試乗を含め、ショップの皆さんと意見を交わし、あらたな決意を形にしたバイクは今年3月に納車された。
しかし、その頃は板橋マラソンと宮古島トライを怪我で棒に振って、失意の時を過ごしていた。新車に跨ったのは4月下旬、GW付近。そこから本格的にAタイプ攻略にむけたトレーニングを開始した。
週末100km超のバイク走にブリックラン、暑い日の屋外LSD走、バイクコースの実走にOWSなどひと通りこなし、大会の2週間前からはしっかりテーパリングを施した。補給計画の組み立て、トランジションのシュミレーションなんかもやった。
対策練習として、これまでの倍以上時間を費やしたと思う。容赦なく時間を持っていかれた。けれどまったくイヤではなかったし、むしろこの齢になってもそんなふうに懸命に臨める対象があることが嬉しかった。
分水嶺は8/15のAタイプのバイクコースの実走の日だった。容赦のない陽射しに吹かない方がいいくらいの温い風のもと、大会トランジションの設営される河原田の佐和田海水浴場からスタートして、レース通りに大佐渡から両津、小佐渡へとペダルを漕いで、終盤の難所である小木や三川を経験した。
小木の坂では、いまにも売り切てしまいそうな脚で1番軽いペダルをクルクルとまわしながら激しく後悔した。もちろん、Aタイプにエントリーしたことを。もうあと戻りはできない。どうしてもダメならそこでリタイヤすればいいと、逃げ道をつくることで気持ちにゆとりを作った。
喘ぎ喘ぎ進み、残った脚で最後の難所の三川の坂を上ると左手には今まさに日本海に沈まんとする大きな夕日が眼前に飛び込んできた。
佐渡には何度も訪れているけれど、そこから夕暮れる空や海を眺めたのは初めてだった。それもサドルの上で。橙(だいだい)に染まる海を横目に、クルクルとペダルを回し続ける。
ーこのあとのフルマラソンへ繋げられるのか。本当に走れるのか。
本番までに自分ができることといえば、バイクでの補給を見直すことぐらいだった。このときのコース実走は、ネットで約7時間、休憩などを含めたグロスで7時間半を費やしていた。
経験が活きた。本番はとにかく補給に努めた。バイクを漕ぎ出してからはエネルギーを継ぎ足すように、早め早めのこまめな補給を行なった。もちろんバイクはオーバーワークにならないように自制しながら。
エイド間の距離を把握して、区間毎で摂るべき補給をリスト化して実行した。AS、WSには停車してしっかり補充した。ハンドルが忙しくなくなったら何かを口にする。ペダルを回しながら次に何を口に入れるかを考えた。
練習では使ったことのない塩タブレットを急遽取り入れたが、ちょい足しとして大いに助けられた。チームメイトの塩キャラメルをひたすら頬張る作戦がお手本になった。
バイク終盤、真野から八幡の間ではランに備え、残った補給をむりやり口にした。
天候に恵まれたと思う。風の影響は小さくはなかったが、風は雲を運び陽射しを防いでくれた。暑さ対策をしていた分、アドバンテージを得ることができた。
水分補給は想定内に納まった反面、トイレで用を足さねばならなくなった。長丁場では致し方ないのか。白瀬のエイドで、ドリフのコントよろしく、呆れるくらいに止まらなかった。
ランの補給はざっくりしていたが、ここもバイク同様、各エイドステーションの配置を距離換算して充分に水分は摂れると踏み、普段のフルマラソンの補給装備で臨んだ。実際走ってみるとエイドの間隔が長くないので水分の飲みすぎには注意をした。
太陽が昇りはじめる6時半に佐和田海水浴場をスタート、陽の沈んだ18時半にフィニッシュテープを切った。初めてのAタイプの走破タイムは12時間4分。絶景の舞台、佐渡島を丸ごと使う贅沢な遊びだった。
終盤の終盤の黄昏れどきのランコース、子供の頃、夢中で遊んで気がくと日暮どきを迎えた記憶がよみがえった。
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ツカサスポーツさん撮影
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ぼくは確信する。長丁場の好走の鍵は補給だ。肉体的精神的疲労に苛まれても、口に入れたものをよく咀嚼して飲み込む。そうすれば身体は吸収し、出力してくれる。補給を怠らなければ動作の継続は可能なのだ。
トライアスロンは食べるスポーツだと誰かが言っていたが、距離や時間が伸びれば伸びるほど、それが試されるのではなかろうか。汗として外へ出る水分はもとより、共に放たれた塩やミネラルを補給で取り込んで生理サイクルを再構築する力が必須だ。つまり、食べながら飲みながら長い距離を練習することが攻略の要だと思った。
これはレース後のリカバリで知ったのだが、運動中の血液は筋肉といった機動系に回されて内臓の血流は80%程度減少する。そこに消化吸収が良いものとはいえジャンジャン放り込まれるものだからたまったものではない。さらにそれが長時間にわたるって消化吸収能力が徐々に低下し、レース後は内臓疲労の回復に努めなければならないそうだ。
とりあえず初A出場の経緯と、この経験を通じて補給に対する考え方が大きく変わったという話でした(つづくかも)。