2015年9月29日火曜日

第14回 越後湯沢コスモスハーフマラソン 2015.9.27


 第1ウェイブの真ん中あたり、いつものようにほど良い緊張感を持ってスタートの号砲を聞いた。スタートまでは周りと歩様を合わせて進み、ゲートのセンサー通過からは息をつくるつもりでランナーの群れを縫うように走る。
 あまり周りをキョロキョロ見ずに、視線は前方の道路に固定して走り続けた。アスファルトは今しがた雨が降ったように黒く濡れている。入りの1kmは4分30秒だった。
 2km、3kmと進むにつれ発汗著しい。気温は20℃前後にかかわらず、サンバイザーのツバ先から汗が滴り落ちた。これはちょっと用心と思い、最初のエイドでスポドリを口に含む。そこから左折するとコースは山道となり、上り下りの激しさが徐々に増していった。
 上り坂の途中、5km表示を通過した。辛うじて25分を切っていた。ペースが遅い。それは上り坂の所為にして、まだ始まったばかりだと気持ちに折り合いを付ける。

 大源太(だいげんた)までは緩やかな上りが続く。相変わらず発汗が著しく、思うようにペースが上がらない。一緒に走るランナーに抜かれることはあっても、抜くことはなかった。焦りが少しづつ不安に変わる。調子がよくないかもしれない。ただ「調子」という安易な言葉で片付けてしまっていいのかはよく判らないでいた。
 ようやく上り坂が終わり下り坂に入った。トンネルをくぐるその少し前に、右足の靴紐が解けたことに気がつく。背後を走るランナーから、靴紐が解けてますよ、と声を掛けられる。僕はランナーの群れから外れ、道端に寄って紐を結んだ。焦る気持ちを少しでも和らげる意味もあった。そう言えば、去年は解けた靴紐をほっておいてそのまま走ったっけ。
 下り坂は続いた。靴紐を結んだことを頼りに思い切りくだる。一歩毎にズシリと足首と大腿部に振動が伝わってくる。昨年この辺りはキロ4分を切った。今年は10秒ほど遅れて、鬱蒼とした濃い緑に覆われた山道を駆けおりた。

 山間部から里へコースは続く。下り坂をうまく利用してスピードに乗りたいが、思うように身体が反応してくれない。多少息も苦しい。辛うじてキロ5分を切る程度のペースに留まってしまう。
 小刻みな上り下りが現れる。視線を濡れたアスファルトに固定しながらフォームを点検する。腕振り、腰の高さ、歩様。それぞれを何度も執拗に。そうすることで走ることに集中して、何か変化が起こることを期待した。
 10km通過は49分台。今日は難しいな。不安が諦観に変わる。じわじわとネガティヴな思考に取り込まれていく。するとパタパタと左足から音が聞こえた。今度は左脚の靴紐が解けていた。溜め息が出そうになる。すぐに側道に寄り、解けた紐を結び直す。しゃがみ込んだ前をいくつかもの足音が通り抜けていく。ぼくはすぐに立ち上がり、その足音達を追いかけた。

  下り坂の勢いを借りながら5分を切るペースで進んだ。コースはスタート地点に戻り13km地点を通過。1時間4分台。リタイヤしてしまうことを想像してみたが、ここで走るのをやめる勇気と、レースを投げるのに相応しい理由が見つからなかった。あと残り8km。維持できるこのペースで進もう。この時は悪くてもキロ5分ぐらいで進めるだろうと高を括った。ただそれが容易でないことは何となく想像できた。けれどやっぱり走るのをやめる訳にはいかない。
 下り坂が続いている間は何となくごまかしが効いたが、上り坂になるとペースはガクッと下がった。脚にきているというやつだ。
 そんな上りの道すがら、突然、名前を呼ばれハッとする。同級生のHだ。前日SNSで簡単なやり取りをしていたが、まさかこんなところで!と思いつつ、ぼくは咄嗟に合図を返した。少なくともカッコいい姿ではないので、バツの悪さを感じたけれど、思いがけない声援が背中を押した。前に進む力に変わる。

  高架橋を渡り、上り下りが何度となく続くー畝った通りの駅前の商店街へ進んだ。消化する距離に比例するようにペースは落ちていく。何度か諦めて立ち止まろうとしたけれど、そうしたらそこで全部が終わってしまうような強迫観念が働いて、それだけは許さなかった。
 越後湯沢駅前でM谷さん、商店街の折り返しでAkiちゃんを見かけた。どちらも声を掛ける間も無く通り過ぎて行く。
 昨年もこの通りは辛かった。力を出し切って頑張るという点では似ているが気持ちが対極、正反対だ。辛いけど楽しい、ただ辛いだけ。去年は開いていたが、今年は完全に閉じている。そんな感じだ。

 再び高架橋渡る手前、エイドでスポドリと水をもらい、水は頭から被った。そうすることで何かが変わるかもしれないと思ったけれど、何も変わらなかった。シャツの背中が濡れ、ヒンヤリと冷たくなっただけだ。なす術もなく、打ちひしがれたようにコースの一番左をトボトボと走った。残り3kmを切ったと頭で理解していても、ペースを上げる元気はなかった。ならば少しでもは楽しもうと思ってみたけれど、気持ちが不貞腐れていて切り替えられない。ただゆっくりと進むことしか出来なかった。左腕のガーミンはキロ6分のペースを示していた。
 ようやくゴールが見えた。ひとまず終了だと思うとホッとした。ぼくは変わらない足取りのまま、ゴールの真ん中を通りフィニッシュセンサーを踏んだ。時計は1時間49分。脚を止め、膝に手を置いた。それから何事もなかったように、再び歩き出そうとすると大腿部が重く、鈍い痛みを感じた。

 週末にアップしたブログの締めに、昨年の自分と勝負だ!と締めた湯沢コスモスハーフマラソン。結果は大負けだ。スタート前、ゲストの千葉すずさんが、マラソンシーズン突入の秋の初戦、皆さん足慣らしのつもりで気軽に走って下さいね、と話していたのを思い出し、その言葉にすがる想いになった。次走に繋がるレースとはとても言えない内容だが、いくつもの大会に出ていればこういう事もあるのだろうと、ありのままを受け入れながら、日々のトレーニングの中で原因の糸口を掴もうと思う。次走は新潟シティマラソン、今度はフルマラソンだ。(了)

2015年9月26日土曜日

トレーニング'15.9.21〜9.25 (レース週)

 9月4週のトレーニング
テーマ :ポイント練習、時間走とペース走。

月 島ラン30km ジョグ3時間20分

    スイム1,000m+α (50m、70秒インターバル10本、ドリル他) 30分
火 アクティブレストスイム1,400m+α (100m×6、50m×10、ドリル他) 40分
水 ラン16km 12km.4分50秒走 4kmジョグ 80分
     バイク40km 水原〜290号線〜出湯 90分
木 ラン12km 5分30秒ペース 65分
金 休養

週の振り返り 
 シルバーウイーク3日目。K夫妻とジョグで島2周。途中、Kねこさんとすれ違ったり、M谷さんに抜かれたり。リレーのダメージが色濃く残るハムを引き摺るように3時間オーバーで30km。
 午後はアイシングを狙ってプールへ。プルの抜手はズボンのポッケから手を抜く様に、を呪文の様に繰り返し、ポッケのある位置までしっかりかいてはスッと抜き、キャッチは水を丸めとるように前体重で…。気は早いが来年に向けた泳力アップを目指し基本動作のおさらいをやった。
 そして連休最終日は湯沢コスモスの確認走。いつもの12km走とコースを変更して、少し起伏のある放水路コースを走る。欲を言えば40秒台でいければ良かったが、まぁ練習走としては上々な方だろ。本番は昨年の時計、ネットタイムの1時間37分越え並を目指すつもりだ。ライバルは過去の自分だ。

 9/25までのRUN距離…178km(トレ時間/週…8時間30分 程度)

2015年9月24日木曜日

村上・笹川流れ国際トライアスロンのこと

 AM7時集合。ファイターズさんと2人でチームメンバーが出場する村上トラの応援に行く。もちろんバイク自走だ。

 明け方の雨で路面は濡れていた。気温も低い。雲の切れ間からわずかに朝陽が覗いていたけれど、雲行きは怪しい。すぐに雨が降ってもおかしくないような空模様だ。そんな中、ファイターズ&シグナストレイン出発。比較的、車通りの少ない道を選んで村上へ向かう。お互いに引き合いながら30km/hあたりをキープして黙々とペダルを漕いだ。村上に近づくにつれ天候が崩れていく。風が強くなる。ぼくが応援に向かうことの因果関係を自分自身で疑うほどだった。ひょっとしてスイム中止か?
 荒川を渡ったところで、しばしコンビニ休憩。ファイターズさんの持参した大会コースマップで応援ポイントを相談して、再び会場に向かった。

 トライアスロンのスタート会場に到着。晴れ間が覗いていたが風があった。
 会場には外国から参戦する選手や男女エリート選手が多く、今まで見た大会よりも一段と華やかな印象だ。

 海の向こうにポッカリと浮かぶ粟島が見える、そんな風光明媚な景色の中、色鮮やかなブルーとホワイト基調のデコレーションに覆われた特設会場が大会を彩っていた。会場そのものがカッコよく、エリートの決戦仕様のバイクに興奮した。アドレナリンが分泌されるウズウズしてしまう。何故エントリーしなかったのだろうと少し考えてしまった。


 大会が始まった。トランジションのバイク、ランの出発口の目立つ場所に陣取ることに成功した。これで皆に声援が送れる。
 バイクスタートはすぐに14%ほどの急勾配を登らなくてはならない。決して楽ではない。バイクスタートに関わらず落車やトラブルなど目の離せないシーンがいくつもあった。
 坂を上る直前、友人や家族から声援を受ける選手も少なくはなく、皆一様にペダルを力強く漕ぎ出していった。潟鉄メンバーの全てを見送って彼らの無事を待った。



 エイジのバイクが無事に戻ってきた。次々とゲートへ吸い込まれたかと思いきや、お次はランで坂を駆け上がっていく。時計を見計らい、ぼくらはフィニッシュ会場の市役所へ移動した。この頃になると陽射しには充分な力が感じられ、直射を浴びると汗が滲み出るようだった。観戦する僕らでそうなのだから、選手たちはもっとだっただろう。

 彼らの冒険の終わりを告げるランの直線コース。ゼッケンナンバーと名前が呼ばれ、出身地やエピソードなどが場内のアナウンスによって紹介され、祝福のメッセージが添えられる。
 沿道のぼくらは一様に、ラスト!とかガンバ!など、誰彼なく声援を送った。潟鉄メンバーもそれぞれいい顔でフィニッシュを迎えた。


 ゴールした選手で賑わうフィニッシュ会場では、応援したぼくらにもお裾分けが許されていた。昼飯代が浮いたねと、ファイターズさんとほくそ笑んむ。一通り腹ごしらえをしてぼくらは帰路に着いた。
 帰路は追い風が手伝い、ファイターズ&シグナストレインはave.35km近くをキープした。走りながら今年一番のマジ走りかもしれないなと思った。脚を余すことなく使いきるつもりで漕いだ。それはきっと仲間たちの頑張っている姿を目の当たりにした影響に違いなかった。
 選手のみなさんお疲れさま!そしてファイターズさん、ありがとうございました!
 思いがけず楽しい1日だった。







2015リレーフルマラソン in新潟市陸上競技場のこと。

 世間では5連休の初日となる土曜日。午前中に仕事を済ませ、電車で陸上競技上へ向かった。
 リレーフルマラソン。その名の通りフルマラソンの距離を数人で襷リレーするイベントだ。1周400mのトラックを全速で走ればちょうど良いポイント練習になるだろうと思い参加することにしたのだった。

 ぼくらのチームは豊栄走友会からゆうこりん、GOさん、ヤッチャン、M谷さん、アキちゃん。それからトキランからK林さん、H川さん。H川さんは諸用のため少し遅れて合流する。つまり女性6名に男2名が加わった男女混合8名のチームだ。
 そして気が付けば仮装チームだった。ゆうこりんとGOさんはトキをイメージしたピンクのコスチューム。アキちゃんはパンダ、K林さんはケーキの着ぐるみ。着ぐるみで走るなんてなかなか出来ない。ぼくはプリンの被り物の担当だった。M谷さんとヤッチャンはノーコスプレ。差し詰め仮装チームの本気走り担当といったところだ。欄外チームの出来上がりだ。

 市長の挨拶など随分しっかりした開会式を経て、予定通り大会は16:00スタート。第一走者はM谷さん。取りあえず1周毎で襷を繋ぐオーソドックスな作戦だ。第二走者はぼく。襷を受け取るやすぐに「プリンー、ガンバレー!」といくつもの声援を頂く。誰にでもわかるのがプリンのいいところかもしれない。声援を受けるとは思いもよらなかった。

 続いてケーキのk林さんへ襷を渡す。大きな歓声が沸く。着ぐるみなのに速い!笑いも混じる。走っている本人は半端なく辛いはずだ。それからアキちゃんパンダ。これも速い。向こう正面、直線で数人を抜く。さすが実力者らしい(パンダ)走り。そしてヤッチャンを挟んで、トキの格好したゆうこりん、GOさん。ピンクTシャツをトキ色になぞらえたコスプレだ。これはちょっと微妙かと思いきや、声援がいくつか聴こえる。帽子に気が付けばそれと判るように上手に作ってある。


 チームは順調に襷をつないだ。そうして予告通りH川さんが到着。彼女は黒いメイドのコスプレだった。会場到着から早速、襷を繋ぐ。会場のアナウンサーもすぐに気がつき、仮装チームにメイドが加わりました〜、とのアナウンス。しっかりした仮装で走っているのは、ぼくらのチームだけなので簡単に見当はつくのだ。

 結果は3時間4分、43チーム中35位でフィニッシュ。残念ながらサブ3には届かなかったが、無事に皆で伴奏ゴール。そして狙い通りの「大会を盛り上げたで賞」をいただき、みんなで記念撮影。


 結局、ぼくはトラックを17周。途中から2周縛りになり1周を1分半、2周800mを3分狙いで走り続けた。なかなか時計はその通りにはいかなかったけれど、ハムを十分に追い込む事が出来た。筋肉痛間違いなしだ。
 それにしても思いがけず楽しいイベントだった。たまにはこういうのもアリです。
 チームのみんな、楽しい時間をありがとうございました。(了)



2015年9月20日日曜日

トレーニング'15.9.14〜9.20

9月3週のトレーニング
テーマ :ポイント練習

月 休養

火 朝ラン5km 6分〜4分半ビルト走 28分
     帰宅ラン20km 5分30〜40秒 120分
水 休養
木 朝ラン10km 6分 60分
金 休養
土 リレーマラソン7km アップ+トラック17周
日 バイク100km (村上トライアスロン自走応援) 3時間半

今週の振り返り 
 火曜は帰宅ラン。いつものルートに少しアレンジする。コンビニ補給を織りまぜながらペース固定で20km。背中のリュックにもう10kgぐらい重りを入れて走っていれば上出来の内容だった。
 そして翌水曜日。脚が怠い。木、金曜の夜はノートトレ確定なので、完全にお休みすることに抵抗を感じたが、翌朝トレの内容でカバーすることで折り合いを付ける。
 シルバーウイークは楽しみながらトレーニング出来るイベントが盛り沢山。来週の日曜日は湯沢コスモスなので、そこをわきまえてコンディションを整えるつもりだ。

 9/20までのRUN距離…120km(トレ時間/週…7時間程度)

2015年9月14日月曜日

第27回佐渡国際トライアスロンBタイプ ラン〜フィニッシュ編

 ランへのトランジションは落ち着いていた。バイクジャージを脱ぎトライスーツになった。そしてここでもプチトラブル。背中のジッパーが壊れたようで閉まらない。二度ほどチャレンジしたがダメだった。背中が空いてるのは変じゃないかなぁと考えたが、どうすることも出来ないので放っておくことにした。ソックス、ランシューズを履き、ウエストポーチを装着する。そしてポーチからアミノ酸顆粒を取り出して口に流し込む。サンバイザーをしっかり被り準備完了。雨の中、ランパートの始まりだ。
 ちょうどこの時、日本選手権トップの選手が会場に入ってくるアナウンスが聞こえた。
 お帰りなさい。それでは、いってきます。そんな心境だった。
 ぼくはトランジションからランコースへ向かった。

 ほどよい興奮と、ZOOTのランシューズのお陰で走り出しは楽だった。練習ではこうもすんなりと脚が出てくれない。序盤は足慣らしのつもりでタイムにこだわらず進んだ。
 商店街に出ると、沿道から次々に、いってらっしゃい!の声が掛かる。そうだ、またここに帰ってきて笑顔でフィニッシュしなくちゃならない。ぼくも、いってきますの挨拶を返す。
 最初の1kmは5分30秒。バイパスに出る。一体どこにへ向かうのか気になりながら誘導に従って進む。
 2km通過は5分10秒台。このまま調子よく行けるような気がした。3kmは5分台。調子よすぎかなぁと思っていると、後ろからポーンと背中を叩かれる。よっ!まるで道端で会うかのように、A木さんが笑顔で声を掛けてきたのだ。ぼくは唐突に声をかけられたことと、それがA木さんだったのでかなりビックリしてしまい、エーッと大きな声を出してしまった。
 A木さんは何事もなかったように、いつもの笑顔を残しながら前を行く。追いかけようと加速したが、ぼくには難しいと思いあっさり諦めた。彼の背中がちょっとずつ小さくなっていく。

 そもそものぼくのランの計画はキロ5分40秒ペースなのだが、この感じなら20秒台は狙えそうだと思った。なので最初10kmぐらいまでは30秒を狙って行ってみて、後半に上げることにしよう。ここからはネガティヴ走だ。
 ぼくはいつものように効率的なフォームを心がける。骨盤を前に突き出すようにして、肩を落とし、ちょっと俯き加減で前傾を意識する。濡れたアスファルトを見つめ続ける時間が長くなる。

 6km過ぎあたり。ふっと顔を上げると目の前にT邊さんを発見。すれ違いざまに声援を送る。いつも柔和な表情の彼が、とても真剣な表情に変わっていた。
 灰色の空に降りしきる雨。取り立てて寒くはない。ただ気になるのは濡れたシューズの頼りない感覚ぐらいだった。

 折り返しが待ち遠しく、そこまでがとても長く感じた。8kmを過ぎ、交差点を左折してから、大きくうねるようなアップダウンが続く。そして10km手前、先ほど追い抜かれたA木さんが折り返してきた。A木さんから声援を頂く。次いで12kmあたりでフェマンさんとハイタッチ。フェマンさんは余裕の表情でこの状況を楽しんでいるように見えた。ベテランの貫禄だな。そしてすぐ後ろにタカさん。大きな声でぼくの名前を呼びながらすれ違いでハイタッチ。元気をもらう。思わず笑顔になった。

 折り返し以降、下り坂を利用しながらペースアップしようともがいたけれど、その想いとは裏腹に、身体が重く感じる。無理せずキープするのが賢明か。シューズが濡れてできた靴擦れが気になり、両足の小指と、特に利き足のヒラが着地のたびに痛み始めた。

 ゴールはもうすぐだと呪文のように繰り返す、あと6km。腕のガーミンのキロラップのアラームが鳴る。時計に目をやる。ペースは20秒ぐらい落ちていただろうか。あと5km、なんとか粘ろうと思いきや、あれ?あと6kmじゃん。どこかで距離を見誤っていた。
 更にペースが落ちていく。キロ6分に割り込みそうだ。脚に鉛を巻いているような感じだ。エネルギー切れか。さっきの時計の見間違いもそこから来ているのかもしれない。次のエイドまで距離はある。ただ気持ちはしっかりしていた。とにかく効率的に楽に脚を動かすことに集中する。

 交差点を左折する。再びペコわとさんを発見。雨具を着てバイクに跨っていたが一目でわかった。ぼくを発見して「おー、はやーい!」ぼくの耳にはそう聞こえた。ただ何か返事を返したかはよく覚えていない。
 それから骨っ娘さん、すぐ後ろにオニバスさんを発見。ハイタッチする。ナイスラン!と声をかけたと思う。
 あと残り3,4kmのバイパスの直線、Aタイプの先頭ランナーとすれ違う。まるで別の次元の走りに見えた。さすがAタイプのトップ、僕とは格が違った。
 少しでも効率的に走ろう、その事だけを考えながら脚を動かしていた。エイドで口にしたコーラが効いてくるまでの辛抱だ。すると反対車線から大声でぼくの名前を呼ぶ声がした。H澤さんだ。満面の笑顔で近づいてきてタッチ。元気をもらう。あと少し、頑張らなきゃと思った。
 商店街に入ると、お帰りなさいの声で迎えられた。アーケード沿いを進んでいると、背後からAタイプのバイクフィニッシュを迎えようとするT中さんに名前を呼ばれる。さすが速いなぁと感心しながら、T中さんファイトー、と大きな声で返す。
 皆、去来する様々な想いを胸に秘め、前に進もうとしているのだ。ぼくのなかで何かが変わろうとしていた。

 靴擦れが痛む。エネルギーは切れ切れだ。けれど不思議なことに、このまま走っていたいと思った。もう一度、バイクに乗ってもいいとさえ。それはゴールを目前にした奢りなどではなく、心底思った。これで終わりだなんて勿体無い。今この、ぼくを取り囲むすべての状況がとても愛おしく思えた。

 ラスト、フィニッシュゲートに向かって力一杯駆けた。道が雨でぬかるむ。
 ゴールテープを着る瞬間、ぼくは両手を大きく手を挙げた。

《結果成績》総合165位
 スイムラップ 42:03 (241位)、バイクラップ 3:45:04 (205位) ランラップ 1:58:06 (139位)



トレーニング(レース後週)'15.9.7〜9.13

9月2週のトレーニング
テーマ :疲労抜きとラントレ開始

月 休養

火 朝練カブトヤマラン 4km 30分
     スイム800m+α 40分(100×4・2分20秒サークル、キック、各ドリル)
水 ラン10km 6分半〜5分半 60分
木 休養
金 アクティブレスト 朝ラン5km 26分 アップから5分走
土 休養
日 島ラン30km 6分半〜5分20秒 3時間半
     スイム800 m+αとドリル 40分

今週の振り返り 


 佐渡トラ明けの月曜。時間を追うごとに、身体のあちらこちらにダメージが現れてくる。ピークは月曜の夕方。この日は地元のお祭りが催されていて、その喧騒はまだ覚めやらぬ日曜の歓喜をうっちゃるには丁度良かった。
 今週は仕事の都合も重なってウィークデーはほぼノートレ。
 日曜は島ラン。ヤンバラーズと走友会の合同練習。結構な人数が集合した。その中に、今回はじめましてのH野さん。また新しい仲間が増える。
 1週目は6分程度、2週目は後半から5分20秒ぐらいで走った。思ったほどダメージなく、ウィークデーの休養が佐渡のリカバリーとなったようだ。
 夕方はプール。イージー&ハードの組み合わせで100m、50mをそれぞれ何本かこなす。練習の終盤、A木さんを発見しておしゃべりをする。佐渡トラ以降、痛めている箇所が思うようにいかないらしい。よって秋のスケジュールは大きく変更しそうだと、いつもの笑顔で話されていた。心中お察しいたします。

 9/13までのRUN距離…78km(トレ時間/週…6時間半程度)

2015年9月11日金曜日

第27回佐渡国際トライアスロンBタイプ バイク編

(スイム編からの続き)
 公道に設置された架設シャワーの下を小走りにくぐり抜けながら、顔を上げて口をゆすぐ。一瞬で口の中の塩辛さが消える。生き返る思いがした。シャワーを浴びる選手を横目に、ぼくはトランジションを急ぐ。
 ぼくのトランジションエリアはランとバイクコースが分岐するすぐ横、招待選手の脇に位置している。幸いなことに他の選手の姿は見えなかった。手に持ったスイム道具をカゴに入れ、クエン酸のパウチジェルを喉に流し込みながら、楽々とスペースを使って着替えた。
 チーム潟鉄のバイクジャージを纏い、ついで脚についた砂をタオルで払いながらバイクシューズを履く。グローブ、ヘルメット、そしてサングラスを装着する。
 ラックからバイクを外そうと…あれ?下半身がごわつくぞ。なんとウエットを履いたまま着替えていたのだった。
 やっちまったぁ〜、と思うと同時に、いいネタができたとちょっぴり喜んだ。我ながら間抜けな格好だった筈だ。
 気を取り直して着替え直す。バイクをラックから外そうとしてまた気付く。今度はバイクにぶら下がっているゼッケンベルトと心拍計を装着し忘れていた。ゼッケンは良しとしても、心拍計は面倒くさくなりジャージの上からベルトを掛けた。これでようやく準備完了。スイムからバイクのトランジットはこれが初めてなので良い経験となった。次回はちゃんとしなきゃ。乗車ポイントまで進みバイクに跨った。

 手始めに軽めのギアでペダルをクルクル回す。会場の喧騒から少し離れると、辺りには日曜の朝の静寂が感じられた。ただ、おそらくいつもの日曜と異なるのは、海辺から吐き出される無数のバイクと、それらに無償の声援を送ろうとする人々が沿道にいることだろう。
 灰色の空の下、佐和田の街を抜け、一路、両津を目指した。
 ぼくは頻繁にサイコンに目をやりながらオーバーペースにならないように気をつける。ave.30km/hが目標だった。ベテラントアスリート、オニバスさんのバイクの経験談が脳裏を掠め慎重になる。ネガティヴ走の実践だ。気持ちを落ち着かせペースを保ち、まずは補給を摂ることに専念した。両津ASまでには固形物をやっつけて、ボトルに詰めたドリンクを飲み干す予定を実行に移す。

 日吉神社を通過する。両津を目指して幾度となく通った道だ。ペースを上げるには最良のコース。ぼくはペダルに集中した。明滅するサイコンが目に入る。時折、液晶画面が薄くなりフリーズする。最後まで持ちそうにないな。普段あまり使わない心拍計のせいか、バッテリーが切れそうな感じだった。

 両津の交差点に出て、すぐに右折する。沿道から大勢の声援が、待ってましたとばかりにワーっと湧く。思わず鳥肌が立った。ぼくへの声援のようでなんだか照れくさい。この地元の声援も佐渡トライアスロンの名物なのかも知れない。そうして両津ASに差し掛かる。バイクスタートから概ね40分。予定通りのペースだ。
 ASは想像したより閑散としている印象だった。減速してスポドリを受け取り、空きのボトルゲージに差し込んだ。それは記念すべき、生まれて初めてのバイクエイドだった。それと、確かペコわとさんが応援に…。あっ!いたぁ!ASを越えた所に潟鉄バイクジャージを纏った美女を発見。彼女もぼくに気づいてくれて「ウォー、いっけー!」と大きな笑顔と声援を送って頂き、すぐさま合図を返した。それは、ぼくなりに格好をつけた返答だったけど、ちゃんと届いただろうか。

 小佐渡へ向かうバイクルートは、今年7月にタカさんに案内されて、強く印象に残る場所がいくつかあって、見覚えのある風景から記憶を辿った。
 沿道の声援もあり調子に乗って、住吉の上り坂を頂上めがけて思いっきりダンシングで登ったけれど、またすぐ上りに出会して、あれーこんなんだったかなと思ったりと、まぁどちらかと言えばハズレが多かったが、試走は大いに役立った。ペダルを回しながら改めてタカさんに感謝する。

 とにかく至る所で、沿道から声援を頂いた。こちらはちょこんと首を下げたり、どちらかの手で合図したり、嬉しくて、また頭の下がる思いだった。空からポツリポツリと雨が降り始めているというのに、まるでそんなことはお構いなしで声援を送ってくれる。

 遂にサイコンのバッテリーが上がる。ホワイトアウト。多田を越えた辺りだったかな。腕時計をしていなかったので、唯一の頼りを失ってしまった気分だった。よっぽどであれば近くを走る選手に、今何時ですか?と質問するのもアリかなぁと考えてみる。すでに2時間近くバイクに跨っていて時間感覚が麻痺してきていた。ギアとケイデンスの雰囲気で走り続けるしかなかない。それから里程標を見逃さないように注意することにした。

 赤泊ASが近い。さぁ間もなく小木だ。小木の坂だ。心の準備をする。距離に馴れないせいか、腰が痛む。バイク用の背筋が足りないのかも。ついで右の足首が何故か痺れる。ひょっとしてこれは計測バンドのせいかなと思い、バンドを緩めようとした。マジックテープで止まっていた計測バンドはいとも簡単に足首から外れてしまった。当たり前だ、マジックテープだもの。自分自身にツッコミを入れる。ぼくは右手にバンドを持ったまま、ペダルを踏みながら暫く考える。空のベントウバコに仕舞おうかと思ったが、潔くバイクを降りて右足首に巻き直す。すると、シャーっとペダルを漕ぐ音とともに数台のバイクが、ぼくの前を通過していく。その疾走する姿がとてもカッコよく映った。ぼくは一つ背伸びをしてバイクに跨る。ちょっと腰の痛みが和らいだ。前を行くバイクを追うつもりでペダルを踏んだ。

 遂に、小木だ。道路を右折して坂を上る。試走の時はダンシングで上ったけれど、此度はシッティングも交え、当然インナーも活用した。それは記憶より長く険しく感じた。そして、後方から女性とおもわれるTTバイクにアッサリ越されてしまう。スゲ〜と感心しながら気持ちに火がつく。負けてらんねぇー、チクショー。必死に漕いだ。その差は縮まることはなかったけれど、お陰でひと頑張りすることができた。

 この頃になると雨脚が強まっていた。路面が濡れている。それでも相変わらず沿道からは声援が届く。雨の中、傘をさしての応援だ。
 潮掛鼻、西三川郵便局までたどり着く。ここを越えるとあともう少しだと思った。坂を下っていくと眼前には真野湾が広がっている。
 サイコンは消えてしまったけれど、無事にここまで来ることが出来た。これはひとえにCADD10のお陰だ。バイクを愛おしく感じてしまう。もちろん大会前にメンテナンスを引き受けてくれた佐々木輪店さんにも感謝しなきゃ。
 今回はほぼ完成車の状態で参戦したけれど、来年はもっとカッコいいホイールを装備して決戦仕様で臨みたい。それからDHバー。何度か握ってみたけれどちょっと不自由に感じ、スピードに乗るときは下ハンを握ることが多かった。こういうところも、一考を要すところだ。ぼくにとってバイクはまだまだ未知の領域が多い。より乗りこなすことはもちろん、機材のことなんかもちゃんと勉強しようと思った。

 住宅の並ぶ通りにに入ると、何かの建造物に備え付けてある時計が目に入った。正午前にはランに入れそうだ。上出来じゃないか。但し、あの時計が間違っていなければ。
 不意にランナーが目に飛び込んできた。トランジションはもうすぐそこだ。ようやく戻ってきたのだ。商店街の突き当りを左折すると、スタッフから減速の指示を受ける。ぼくは降車ラインでバイクを降りた。4時間近くぶっ通しでバイクに跨っていたのは、これが初めてのことだった。
次はランだ。バイクを押しながら少し足早にトランジションへと向かった。
(ラン編へと続く)

2015年9月10日木曜日

第27回佐渡国際トライアスロンBタイプを終えて 補給編

 まだ身体のあちらこちらに長時間身体を動かし続けた余韻が残っている。佐渡国際トライアスロンBタイプ(スイム2km、バイク105km、ラン21km)泳いで、漕いで、そして走った6時間半。有酸素運動に取り組んでもう5年目になるけれど、それはぼくにとって最も長い競技時間となった。

 ここで今回経験した幾つかのことをテーマに分けてまとめようと思う。
これらは次回に向けた忘備録としながら、ともすると印象に残る記憶の羅列のようなものになるかもしれないが、そこはお許し願いたいところである。

 まず最初に挙げたいのは、レース中のエネルギー補給のことだ。
今回、出場するにあたり、最も心を砕いたのがこの件だった。消費カロリーは5,000kcal以上を必要とし、レース中の補給は3,000kcalを目安にした。内1,500kcalは持参して残りはエイドを活用しようと考えていた。
 結果から言うと、ランの終盤で急激に身体が重くなったことの原因がエネルギー切れにあるので、もっと積極的にエイドを活用するべきだったと少し反省している。ランの入りがあまりにも調子が良く、あわよくば!という思いが過信を生んだ。

 レース補給は以下の通りだ。
 就寝前「Mag-on顆粒」
 スイムチェック前「トラベルミン(酔い止め)」「アミノバイタルジェル」「Mag-on顆粒」
 スイムアップ後「パウチタイプのクエン酸ジェル」
 エイド20km地点まで「カロリーメイト2本」「CCD500ml」
 50km付近まで「アミノ酸顆粒」「きんぴら饅頭(冷凍持参)」「サバス梅味4本分をグレープフルーツジュースで割ったボトル1本」
 これでバイクのベントウバコは予備のアミノ酸顆粒と乾燥した梅干しだけとなった。

 エイドはひたすらスポドリ(アクエリアス)をつないだ。ボトル5本はいっただろう。フードは赤泊あたりでバナナを1本。これが殊の外甘くて、とっても美味しかった。けれど一気食いだったせいか小木の坂で胃が少し苦しかった。
 バイクアップ後、ランの支度を終えてアミノ酸の顆粒を入れる。前半のエイドはスキップして、ぼくのハーフ走のルーティーンであるところのアミノバイタルジェルを9km通過で補給した。調子が良かったので、これで最後まで行けるだろうとタカを括ったのが良くなかった。ラスト5〜6kmあたりで頭が回らなくなり、急激に身体を重く感じペースは大きく下降。バイパスのエイドでコーラをもらい、ラストのアーケードでもコーラを貰って凌いだ。
 補給はざっとこんな感じだ。バイク終盤で炭水化物を入れていたらラン後半の内容は違っていたかもしれないと思う。

 そして摂取量もさることながらタイミングも大事だ。
 バイクの最初の時間でせっせと口に運んだことはとても良かった。元より両津ASまではジェルボトルを半分と、ボトルローテーションを考えてCCDを空にするイメージを持って臨んでいた。結果的にも、バイクの序盤で多くカロリーを摂ったことが、以降に効果を発揮したと推測する。摂取してから出力されるまでの時間は疲労度合いに呼応することを踏まえると尚更だ。それから入りのバイクペースを落ち着かせたことも、ぼくの性質上小さくはなかったと考察される。

 更にもう一つ。ボトル位置のことだ。サドル左後ろにメンテボトルをセットして、フレーム部2箇所、サドルの利き手側、そしてバイクジャージのセンターポケットでローテーションすることが正解だった。この辺りに気づけないのは、まだまだ「馴れ」が足りないなと思う。

 前日及び朝食は、特に意識せず普段の量と変わりなく摂った。但し、消化の良くないナマモノは避けた。ちなみにアルコールは月曜のから止め、コーヒーなどのカフェイン類も断った。ここは我ながら涙ぐましい努力ではあったが、体調を崩し、代わりに風邪薬を飲んでいたので、アルコールへ手を伸ばすほどの余裕はなかったと言うのが正直なところだ。

 レースに向けたコンディショニング、レース中のその管理は欠かせないことだ。今回、気温が適温だったのでその分随分楽ができたような気がする。もちろん、レース後の手当ても怠らないようにしたい。

第27回佐渡国際トライアスロンBタイプ スイム編

 スタート30秒前。大きく息を吸って胸の高鳴りを抑えた。砂浜のある一点を見つめ集中する。
一瞬の静寂。そして、ファーンが鳴り響いた。ウエットスーツを纏った青いキャップの大群が拍手をしながら、あるいは歓声を上げながら、一斉に海へ向かって走り出す。ぼくは歩いて海に入る。そしてジャブジャブと海水をかき分けるようにしばらく歩く。
 心を決め海中に飛び込んだ。そこからが熾烈なスイムの幕開けだった。
 四方八方から責め立てられる。押し合いへし合いながら水をかく。ストリームラインが取れない。搔き手を出すスペースが遮られる。ヘッドアップしてスペースを探したけれど、どこもかしこも青いキャップで埋め尽くされている。8月のOWSとまるで比較にならない状態だった。
 位置取りを間違ったか。
 今更悔やんでも仕方ない。ならばインコース、と気持ちを強くする。ブレスのたびに否応なく飛沫を浴び海水が口に入る。塩辛い。進行方向には激しくキックを打つ脚が泡を立てている。行く手を遮られれば、こちらは間隙を見つけ、尽かさずそこへ身体を滑り込ませる。ブレスのタイミングで身体を押され浮上を我慢する。そんな遣り取りが続く。
 ぼくだけじゃない。みな必死だ。そう言い聞かせながら活路を探し続けた。ヘッドアップの度に、海にポカンと浮かんだ黄色い第1ブイが視界に入ってくる。それはだんだんと大きくなって来ていた。

 なんとなくバラけたような気がしたのは第1ブイに近づいてからのことだった。もう同じ轍は踏まない。ブイをカーブするとき内から外へ向かった。海水の流れが変わり、身体が反り返る。夏のOWSの時はこの辺りでハムが痙攣したっけ。慎重に動こう。ロス覚悟で外目に向かい、やっと自分のスペースを取ることができた。気持ちがスッと落ち着いた。
 次の第2ブイまでは150m、コースは鋭角な三角形を描いている。ブレスの際、空を見上げると雲の切れ間から僅かに太陽が見えた。

 第2ブイは外から内に切れ込んで、そのまま外へ向かって水路を確保した。
1人で大外をトレースしているのかな。外れすぎてないかな。数回ヘッドアップしながら周囲を伺う。左手にはカヤックに乗った黄色セイバーが見え、インコース側とアウトのこちら側を認識する。あちらには大勢のスイマーが塊になって見える。大丈夫。群れから少し離れた距離で泳いでいる。波の向こう側に霞がかった岸が見えた。

 落ち着いて泳ぐことができた。前日、車中でスイムについておしゃべりしていたKさんとの会話を想い出す。ボートがスーッと進むイメージ。腕をまっすぐ、下腹に力を入れ、両足の親指を揃える。オールを漕ぐ船がスーッと進む様を想像する。ひとかきを大きくかくというより、ストレッチタイムを長めに取り、水に逆らわないようにする。

 海面付近は陽の光が溶けて明るく、ぼくより下にある海水は群青色を帯びて暗い。そんなコントラストのはっきりした風景に前を泳ぐスイマーの姿は溶け込んでいるようだった。まるで競技写真のワンカットみたいでカッコいい。そう、ぼくも今こうして泳いでいるんだ。ずっと先のゴールを目指して。
 ブレスごとに空を見上げた。灰色の薄曇りの空に、さっきより太陽が大きく覗いていた。真夏のOWSの青空がとても懐かしい気がして、またこの海を泳いでいるんだ、と改めて思った。

 外から内へ向かった。内側のオレンジ色の小さなブイが目標だ。時々、誰かと交錯する。ペースを変えながらそれらを交わした。
 岸がゆっくり近づいて来る。ヘッドアップは上手い方ではなかったけれど、バトルを経験したことで効率良く前方確認ができるようになっていた。あともう少しだ。
 海水の色が薄まって、ついに海底がわかるようになった。ぼくはギリギリまで泳ぐつもりでいた。すでに歩いている選手がいる。その横を泳いで通る。まだまだ。歩くより泳いだ方が速い。かき手が底に当たりそうなところで、ようやく立ち上がる。膝下ににまとわりついた海水をかき分ける。砂浜を蹴って、コンクリートの階段をよろめきながら小走りに進んだ。登りきった所に緑の絨毯が見える。
 あそこを早く通過しなきゃ。ぼくは走りながらスイムキャップを外し、ウエットの上着を脱いだ。
(次回、バイク編へ続く)

2015年9月4日金曜日

トレーニング(レース週)'15.8.31〜9.4

9月1週のトレーニング
テーマ : レース週のテーパリング。


月 ラン13km (5km 4分45秒ペース走) 68分
火 休養
水 休養
木 ラン8km 5分30秒〜5分 43分
金 休養

金曜までの振り返り 

 日曜は佐渡トライアスロン。日が迫るにつれて、初めての経験に戸惑いを感じ、思わず浮き足し立ちそうになる。夢中になってあれこれ考えを巡らしたかと思えば、途端に面倒くさくなって放り出してしまいたくなったりと、情緒不安とも言える状態だった。そんな中、週末のシャワーランが祟ったのか体調を崩してしまう。どうも季節の変わり目には敏感な体質らしい。そう言えば昨年の今頃も風邪を引いてトレーニングをお休みしてたっけ…。従って今週は休養日連休を含め、いたって軽いトレーニングとなる。
 この土壇場でバイクのアレを、スイムのコレをと思うことはあるけれど、致し方なしとスパッと雑念を払い、とにかく当日を良好なコンディションで迎えられるようにと気持ちを強くした。
 そして、先ほどフェマン兄さんの準備した車にバイクを積み込んで頂き、レースに必要なモノをリュックに詰め一応の準備を終えた。現場に持っていくその量の多さにいささか困惑している。レース終了後、これらを詰めたリュックを背負って、両津港まで無事に自走できるのかと思うと気が重くなってしまう。
 そうそう、悩んでいた補給装備の件も概ね固まった。ラインナップは以下の通り。

 マルチデキストリン4本(170kcal×4本)をグレープフルーツジュースで割る
 アミノ酸3g顆粒タイプ× 2本
 アミノ酸3gジェルタイプ × 2本
 クエン酸パウチジェル(冷凍)
 有名店のきんぴら饅頭(冷凍) 
 自家製干し梅 数個
 強力酔い止め 1錠
 バイク、ランそれぞれ辛くなったときのシチュエーションを想像して、あったらいいなぁと思う食べ物、カロリーを摂りながら気持ちも支えてくれそうなモノを持っていくことに。出来うるならば補給をレース中のお楽しみにしたい。
 さぁ、準備完了。明日の朝、再度持ち物確認をして出発するつもり。今日は早く寝ることにしよう。
 8/31までのRUN距離…Swim13.5km / RUN330km
 9/4までのRUN距離…8km