2015年9月14日月曜日

第27回佐渡国際トライアスロンBタイプ ラン〜フィニッシュ編

 ランへのトランジションは落ち着いていた。バイクジャージを脱ぎトライスーツになった。そしてここでもプチトラブル。背中のジッパーが壊れたようで閉まらない。二度ほどチャレンジしたがダメだった。背中が空いてるのは変じゃないかなぁと考えたが、どうすることも出来ないので放っておくことにした。ソックス、ランシューズを履き、ウエストポーチを装着する。そしてポーチからアミノ酸顆粒を取り出して口に流し込む。サンバイザーをしっかり被り準備完了。雨の中、ランパートの始まりだ。
 ちょうどこの時、日本選手権トップの選手が会場に入ってくるアナウンスが聞こえた。
 お帰りなさい。それでは、いってきます。そんな心境だった。
 ぼくはトランジションからランコースへ向かった。

 ほどよい興奮と、ZOOTのランシューズのお陰で走り出しは楽だった。練習ではこうもすんなりと脚が出てくれない。序盤は足慣らしのつもりでタイムにこだわらず進んだ。
 商店街に出ると、沿道から次々に、いってらっしゃい!の声が掛かる。そうだ、またここに帰ってきて笑顔でフィニッシュしなくちゃならない。ぼくも、いってきますの挨拶を返す。
 最初の1kmは5分30秒。バイパスに出る。一体どこにへ向かうのか気になりながら誘導に従って進む。
 2km通過は5分10秒台。このまま調子よく行けるような気がした。3kmは5分台。調子よすぎかなぁと思っていると、後ろからポーンと背中を叩かれる。よっ!まるで道端で会うかのように、A木さんが笑顔で声を掛けてきたのだ。ぼくは唐突に声をかけられたことと、それがA木さんだったのでかなりビックリしてしまい、エーッと大きな声を出してしまった。
 A木さんは何事もなかったように、いつもの笑顔を残しながら前を行く。追いかけようと加速したが、ぼくには難しいと思いあっさり諦めた。彼の背中がちょっとずつ小さくなっていく。

 そもそものぼくのランの計画はキロ5分40秒ペースなのだが、この感じなら20秒台は狙えそうだと思った。なので最初10kmぐらいまでは30秒を狙って行ってみて、後半に上げることにしよう。ここからはネガティヴ走だ。
 ぼくはいつものように効率的なフォームを心がける。骨盤を前に突き出すようにして、肩を落とし、ちょっと俯き加減で前傾を意識する。濡れたアスファルトを見つめ続ける時間が長くなる。

 6km過ぎあたり。ふっと顔を上げると目の前にT邊さんを発見。すれ違いざまに声援を送る。いつも柔和な表情の彼が、とても真剣な表情に変わっていた。
 灰色の空に降りしきる雨。取り立てて寒くはない。ただ気になるのは濡れたシューズの頼りない感覚ぐらいだった。

 折り返しが待ち遠しく、そこまでがとても長く感じた。8kmを過ぎ、交差点を左折してから、大きくうねるようなアップダウンが続く。そして10km手前、先ほど追い抜かれたA木さんが折り返してきた。A木さんから声援を頂く。次いで12kmあたりでフェマンさんとハイタッチ。フェマンさんは余裕の表情でこの状況を楽しんでいるように見えた。ベテランの貫禄だな。そしてすぐ後ろにタカさん。大きな声でぼくの名前を呼びながらすれ違いでハイタッチ。元気をもらう。思わず笑顔になった。

 折り返し以降、下り坂を利用しながらペースアップしようともがいたけれど、その想いとは裏腹に、身体が重く感じる。無理せずキープするのが賢明か。シューズが濡れてできた靴擦れが気になり、両足の小指と、特に利き足のヒラが着地のたびに痛み始めた。

 ゴールはもうすぐだと呪文のように繰り返す、あと6km。腕のガーミンのキロラップのアラームが鳴る。時計に目をやる。ペースは20秒ぐらい落ちていただろうか。あと5km、なんとか粘ろうと思いきや、あれ?あと6kmじゃん。どこかで距離を見誤っていた。
 更にペースが落ちていく。キロ6分に割り込みそうだ。脚に鉛を巻いているような感じだ。エネルギー切れか。さっきの時計の見間違いもそこから来ているのかもしれない。次のエイドまで距離はある。ただ気持ちはしっかりしていた。とにかく効率的に楽に脚を動かすことに集中する。

 交差点を左折する。再びペコわとさんを発見。雨具を着てバイクに跨っていたが一目でわかった。ぼくを発見して「おー、はやーい!」ぼくの耳にはそう聞こえた。ただ何か返事を返したかはよく覚えていない。
 それから骨っ娘さん、すぐ後ろにオニバスさんを発見。ハイタッチする。ナイスラン!と声をかけたと思う。
 あと残り3,4kmのバイパスの直線、Aタイプの先頭ランナーとすれ違う。まるで別の次元の走りに見えた。さすがAタイプのトップ、僕とは格が違った。
 少しでも効率的に走ろう、その事だけを考えながら脚を動かしていた。エイドで口にしたコーラが効いてくるまでの辛抱だ。すると反対車線から大声でぼくの名前を呼ぶ声がした。H澤さんだ。満面の笑顔で近づいてきてタッチ。元気をもらう。あと少し、頑張らなきゃと思った。
 商店街に入ると、お帰りなさいの声で迎えられた。アーケード沿いを進んでいると、背後からAタイプのバイクフィニッシュを迎えようとするT中さんに名前を呼ばれる。さすが速いなぁと感心しながら、T中さんファイトー、と大きな声で返す。
 皆、去来する様々な想いを胸に秘め、前に進もうとしているのだ。ぼくのなかで何かが変わろうとしていた。

 靴擦れが痛む。エネルギーは切れ切れだ。けれど不思議なことに、このまま走っていたいと思った。もう一度、バイクに乗ってもいいとさえ。それはゴールを目前にした奢りなどではなく、心底思った。これで終わりだなんて勿体無い。今この、ぼくを取り囲むすべての状況がとても愛おしく思えた。

 ラスト、フィニッシュゲートに向かって力一杯駆けた。道が雨でぬかるむ。
 ゴールテープを着る瞬間、ぼくは両手を大きく手を挙げた。

《結果成績》総合165位
 スイムラップ 42:03 (241位)、バイクラップ 3:45:04 (205位) ランラップ 1:58:06 (139位)



2 件のコメント:

スピリットZ さんのコメント...

スイムよりバイク、バイクよりランと順位を上げて行くところは、流石ですね!
そういうレース展開は憧れます!
私はまだまだ修行が足りません。
来年に向けて、心の中で静かに闘志を燃やしております。

Cyguns さんのコメント...

スピリットZさんへのお返事です。
なるほど、レース運びは良いわけですね。
今回初めて参加して、とにかく面白かったんです。また来年、参加したいと考えるのですが
もう一度、Bタイプにしようかと思っています。Aを完走するスキルはまだまだ自分にはないと思います。
やらなきゃわからん、と言われるかもしれませんが、このBの経験を踏まえて、もう一度Bに挑戦したいと
考えています。