2012年10月11日木曜日

'12新潟シティマラソンのこと

雨が降ってきた。
「雨が降るなんて珍しいな」隣に並んだランナーがつぶやいた。
確かにシティマラソンにエントリーするようになってから雨が降った記憶はない。
「これならきっと気温は上がりませんね」ぼくはそれとなく返した。
男性は長い海岸線が嫌になるとか30kmを過ぎてからが心配だとか堰を切ったように話し始め、ぼくは相槌を打った。スタート号砲の数分前のことだった。気が紛れて丁度良かった。

新ロゴです
 前方で歓声と拍手が湧き起こった。いよいよだ。スタートの号砲とともに花火が打ち上げられる。歓声を上げた大きな集団がコースに沿って移動を始めた。規則正しくアスファルトを踏む足音が街を圧倒する。仲間たちとおしゃべりをするランナー、後方集団をかき分けるように進むランナーなど様々だ。最初の1kmは6分20秒。ちょっと遅すぎかなと焦りを感じるが、始まったばかりの長い道のり、諸先輩方のアドバイス「最初はゆっくりとね!」を想い出しながら練習の入りの感じで進むことにした。三越の交差点を右折し礎町(いしずえちょう)へとランナーの大群が進む。前回も感じたが圧巻だ。同じ群れの中でこの光景を画像に納める方々が散見される。万代橋を駆け上がり、橋の中央に差し掛かったとき、後方から高橋尚子さんがやってきた。つかさず左手でハイタッチ!予想外にその手はあたたかくパワーを分けてもらったようでやる気にスイッチが入る。偉業を成し遂げた人物から伝播する力は尋常ではないのかもしれない。

 ビルボードプレイスを過ぎ川沿いに出る。幅員が狭く自分のペースを保ちにくいところだ。3km地点で18分。スタートから計算すれば5分50秒できている。隙間を突き徐々にペースを上げつつも、決して焦らず気持ち良く走ることを心がける。最初の給水、県庁のジグザグ道を駆け抜け千歳大橋へ。そこでぼくは大きく右にきれ、自分のペースで坂を登りおもいきり下った。有明大橋もおなじようにした。10㎞地点は58分で通過。設定目標より3分超過。4時間切りの最低限のペースである5分40秒より早く走っているのでそのまま海岸に向けてイーブンペースで進む。

 海岸通りに入った。しばらくすると骨っ子さん家の応援プラカードを発見。通り際に左手を上げながら声をかける。気付いてくれただろうか。雨の降る中の応援に頭が下がる。本当にありがとう。

 ぼくは相変わらずイーブンで進んだ。少し余裕があり全力で臨んでいないような気持ちがして少し後ろめたい気がした。まだ先は長いからと自分に言い聴かせる。ペースアップを考えたが気持ちにブレーキをかけ、その分という訳ではないがしっかりとフォームを意識して進むことで折り合いをつけた。そんな頭の中のやり取りをしていると折り返しのランナーとすれ違うようになった。すぐに走友会の面々も現れ始めた。可能な限り声援を送り、送り返された。いつかあの中にぼくも入れるのだろうかと想像したが途方もないことにしか思えなかった。

 20㎞通過は1時間52分。設定した目標をやや上回る。折り返し地点を過ぎたところで持参の糖質のエネルギーを補給し、更に25㎞のエイド手前でアミノ酸を補給する。容赦ない大粒の雨が降ってきたがキャップとサングラスを着用しているので苦には感じられなかった。濡れたシューズは今更どうにもならないので水溜りを気にすることなく駆けた。またこの日の為にあつらえたランパン、ランシャツも雨の中なんの違和感もなく装備は全く問題なかった。

 30㎞地点を通過したが時計を確認するのをうっかり忘れてしまった。というか確認したかもしれないが覚えていない。このあたりからは記憶が虚ろになる。少し先の関屋分水を超え、32㎞のエイドでバナナをまるごと1本もらう。左手にバナナ、右手に飲み物を持ちながら走る。そんな自分が妙におかしくて走りながらニヤニヤしてしまったことは鮮明に覚えている。
 残り10㎞。ここからペースを上げれば想定以上のタイムを叩き出せるのでは!そんなことを考えていたせいか、僕に対する声援には全く気付かなかった(らしい)。沿道から「キューちゃんが前にいるよー!いるよー!」と何回か同じことを言われても、何のことか理解ずに進むと、確かにあの高橋尚子さんがコースで通過するランナーに声を掛けていた。まったく素晴らしいサービス精神だ。ここは右手でハイタッチ!アイコンタクトが叶わなかったのが残念。立ち止まって両手をがっちり握りしめるべきだったかもしれない。

 入船タワーの折り返し、歴史博物館の撮影ポイント、柳都大橋、万代橋を通過して確実に陸上競技場に近づいていく。ゴール目前に関わらず歩くランナーは決して少なくない。沿道からはあと◯㎞とか、ラスト!とか、という声援が絶え間なく掛かる。周囲への認識はあるのだけれど、ぼくにはそれらがことごとく虚ろに感じた。キツくて苦しい、スパートをかける力もない。ただ止まれない、止まってはならないと強く念じながら走っていた。残り数キロは周囲を感受する能力が欠落し、表層の意識が無意識にとって変わったような状態だった。(うまく表現できない!)ただひたすら走り、前にすすむことしか出来なかった。

フィニッシュまで200m
競技場に入った。ペースは変わらない。みんなが見え右手を上げた。ゴールは目前だ。最後のコーナーに入り、ぼくは右にきれド真ん中のコースに位置をとった。少し背筋を伸ばしゴール板を越えたところで両手を挙げた。3時間47分。ほんの一瞬だが、湧き上がる感情があった。スピードを緩め足を止めた途端そこから動けなくなった。思った通りだった。

 翌日、長めの散歩をした。翌々日は全休。3日目からジョグを開始。次は寺泊10㎞だ。レースまでに強い練習はできないと思うが疲れを癒し、体調を維持して45分切り狙いたい。


10/11までの走行距離・・・72㎞

2 件のコメント:

ファイターズ さんのコメント...

好記録での完走おめでとうございます。
もう少し距離が長かったら、確実に私は抜かれていましたよ・・・。

走るたびに記録更新ですね~。
これからもどんどんいきましょう。

骨っ娘 さんのコメント...

アップ楽しみしていましたー。どんどん引き込まれ、読み終えたときは、私も完走したかのような錯覚に(笑)
バナナ片手に・・のところは思わず笑ってしまいました

昨年よりも1時間もタイムを縮められたとのこと!!練習は嘘をつきませんね~

寺泊10キロ、同じくです~
すっかり気が抜けていますが、頑張りたいですね~