雲ひとつない真っ青な空。会場の柏崎陸上競技場へ到着する。初めて訪れる場所だ。
(柏崎陸上競技場)
(柏崎陸上競技場)
マラソン大会の良し悪しは、大方天候で決まってしまうんじゃないか?と思っているぼくとしては、この段階でエントリーして良かったぁ!とマラソンの神様に感謝した。
この秋のマラソン大会はすべて天候に恵まれている。ありがたいことだ。
フルのスタートはAM9時。15分くらい前からスタート地点にランナーが集合し始める。
走破タイム毎にプラカードが掲げられ、ぼくは3時間〜3時間半と書いてあるところに並ぶ。スタートポジションの位置は悪くない。グロスタイムのみの計測なのでロスは少なく済みそうだった。
号砲、スタート。
トラックを半周して公道へ出る。すぐに縦長の展開になった。前を行くランナーの群れを捌くストレスはほとんどない。むしろ次々と追い越された。
それでも最初の1kmは4分40台。入りとしては速い。
周囲に惑わされないようにペースを落とそうとする。2kmで4分50秒台。無理に落とさない方が良いか、それともこのまま行こうか迷いながら3kmを通過。
汗が滴る。やっぱりイカン!と思い切って5分台にペースを落とし息を入れる。ガマンガマン。始まったばかりだ。
最初の5kmは24分23秒。
ぼくらは国道352号線を通り柏崎市街地を抜け、真っ直ぐ柏崎刈羽原子力発電方面へ向かう。
陽光が背後から射し、路面に映し出される自分の影を見ながら走る。等身大の影との伴走だ。
9km過ぎ。コースは緩やかな上り坂になる。3kmほど続いたと思う。しっかり脚を上げ、予定通り4分50秒台で進んだ。
10km通過の5kmは24分33秒。
(国道352号線。正面がサービスホール)
(国道352号線。正面がサービスホール)
上りがあれば、必ず下りがあるものだ。下り坂の勢いを借りながら、国道をトンネル手前で右折。傾斜のきつい下りが蛇行して続き、行く手が見えない。
30km過ぎにここを上るのかぁ。
坂を駆け下りながら身が引き締まった。
刈羽村集落に入る。14km付近。沿道からはパラパラと応援が送られた。
雲ひとつない青い空と稲刈りを終えた田園風景が広がる。のどかな田舎道をトコトコと計画通りの時計で進む。
15km通過の5kmは24分8秒。
17kmあたりで左折。コースは山に続いている。
この上り坂は聞いてないぞー、と苦笑い。
先月の湯沢ハーフで散々ご馳走になった里山コースと重なった。蛇行する上りは頂上に近づくほど傾斜がきつくなっていく。坂の頂上に到達すると次は下りに向けてギアを入れる。上りのロスをカバーするつもりで勢いよく駆け下りる。
すすきの背が随分と高い。山野を突っ切る一本道を進んでいる途中、拡声器からコースのアナウンスが聞こえた。まもなく海岸線に出るとのことだ。
信号のある国道352号線と交差するT字路の向こう側には海を望むことができた。
右折、海岸線だ。左手に見える海は穏やかでとても静かだった。前方に山が見える。秋の快晴と合わせすこぶる気分がいい。
行く手に見える山の中腹には芥子粒ほどのランナーが見えた。一気に現実に引き戻される。
あそこが折り返しの激坂かぁ、
半ば諦めながら進むしかなかった。
20km通過の5kmは24分27秒。21kmでトータル1時間42分だった。
(国道352号線椎谷。左端の坂が折り返し)
激坂に突入。途中少し左に折れるのだけれど、ぼくの直ぐそばを走るランナーが、えっ、ここで折り返しじゃないのー、とボヤいた。気持ちはわかる。コースが見えないもんね。
ぼくは頭を上げないように、アスファルトを食い入るようにして坂を上る。時計を覗くと5分半までペースは落ちていた。
坂を上りきると折り返し。米山を背景に穏やかな海がキレイだった。
難関突破。息をついたところで、沿道からペコわとさんから「オーッ、イッケー!」と大きな声援をもらう。思いがけないことで力をもらう。
さぁ、ここから来た道を戻るのだ。
25km通過の5km24分31秒。
海岸コースに別れを告げ、再び里山コースへ。
道はわずかに傾斜して上る。来たときは気付かなかったけれど緩やかな坂。コースは見通しの良い直線で、しばらく上りが続くのが丸見えだ。ランナーのやる気を削ぐようなレイアウト。
対向車線でフルの最後尾ランナーとすれ違う。かなり辛そう。そしてこの辺りから、先を行くランナーの中にも似た気配を漂わせている方が見られるようになる。
辛く苦しい時間がすぐそこまで来ている。ネガティブになったせいかキロ5分ペースを割る。走りに集中を欠いてしまう。
いかんいかん。
ペースキープすべく頭を下げ、脚を上げて坂を踏んだ。腰を落とさないように意識する。だんだんと傾斜がきつくなる。そう長い坂じゃない。上りは終わりすぐに下りが始まると信じて進む。
頂上にたどり着き下りで加速。
今までよりも脚が言うことを聞いてくれない。疲労が色濃くなってきた。
再び刈羽村集落に戻る。
来た時よりも応援が少なく、ポツンと一人でランニングしているような気分になる。今になって思うと、疲れのせいかで余裕を失い周囲に気が配れなくなっていたのかもしれない。
30kmの給水を通過。
31km付近から坂を上らなければならないので、ペースアップは坂を越えた32km以降とした。実際ペースアップできるか自信はなかったけれど。
30km通過の5km24分53秒。トータル2時間27分。
坂へ向かうべく右折する交差点で一台の車が停車している。
ちょっと様子がおかしいなと訝しがっていると、ゲストの有森裕子さんが車中から手を出しランナーとタッチしていた。
ぼくも右折際尽かさずタッチ。応援を頂き、ハイッと短く返事をした。有森さんとのタッチはかれこれ3度目だ。彼女はいつでもテンションが高い。頭が下がる。
さぁそしてお待ちかねの坂だ。
少し顎を引き頭を下げる。腰を高く保つ。肘は少し上げて走りに、脚を動かすことに集中する。路面を凝視する。とにかく前へ進む。
一度だけ顔を上げて前方を確認。
カーブを曲がり切ると左折、そこからも坂が続くんだっけ…。
30kmを過ぎてからのこの坂はナイよなぁ。
この頃になると陽は高く、ぼくらに容赦なく熱を放射した。ちょっとでも日陰を見つけて走りたかったけれど、コースには見当たらない。そして上りはまだ続いた。
坂の頂上付近で時計を確認。あまり見たいものではなかったけれど。案の定ペースは5分半を割っていた。それでも頂上からペースを上げる!と鼓舞しながら進む。まだ威勢だけは失うわけにはいけない。
33km通過。下り坂の勢いを借りる。けれどかなり脚にきている。
まだいける、イヤいけるはずだと言い聞かせる。ここでジェル補給。最後の力に変わることを願って摂る。
この辺りから1km毎の表示看板が気になって仕方なくなる。あと何キロと言い聞かせながら坂を下った。
走っているとあれ?今何キロだったけ?と頭も働かなくなる。
エイドでもらった水を頭と脚にかけた。冷たくて気持ちよかったのは一瞬だけだった。
35km通過の5km25分38秒。
坂を下り、住宅街から市街地へ向かう。道は陽射しに照らされてヤケに眩しく見えた。
辻ごとにいる大会スタッフがランナーに声援を送る。時々、沿道からの声援もあった。左手を上げたり短く返事をしてそれらに答える。それでも不思議なぐらい静かに感じ、自分の呼吸音だけがハッキリと聴こえた。
40kmまで走ろうとか、完走したら再来週の五泉はDNSでいいやとか、終わったらビールのご褒美だとか、長岡で旨いラーメンを食べようとか…。
もう、ありとあらゆる事を総動員して、苦しい現実から逃避しようと必死だった。
37km。あと5kmとなってから脚が急に重くなった。勢いは失せスピードは落ちる。もう止まる寸前だった。
38kmを通過。スタートした時の見覚えのある風景。時計を見るのをやめる。脚はもう自分のものでない。
39kmでコーラ補給。炭酸が乾いた口をリセットする。ノーマルコーラを飲むのは久しい。旨い。
40km。とにかく完走しよう。ここまで来ればあと残りはどってことないはずだと言い聞かせる他に手立てが無い。
40km通過の5km27分38秒。
残り2kmちょい。
いつもの近所のコースならこれぐらい、イヤあれぐらいだと何度も繰り返す。すると沿道から残り500!と声が掛かる。いやいや、そんな訳ないよーと思いつつ、もしかして?と期待してしまう自分がいる。
ラスト1km。
やっとここまで辿り着いたか。
少しでもペースを上げようと思い頑張って背筋をシャンとした。スタートした柏崎陸上競技場が見えた。沿道から声援が聞こえる。しばらくの間、自分の呼吸音しか聞こえなかったけれど、ここからはまるで違った。
あと少し。
競技場のトラックに入った。その瞬間、時計表示が見える。3時間31分台。
思ったより速い。
残り数百メートル。もう一度背筋をシャンとする。この苦しみからもう少しで解放されると思うと力が湧いた。惰性で動いていた脚に意識を注ぎ、踏みしめるようにトラックを駆けた。
フィニッシュでは中学生のボランティアがゴールテープを準備してくれている。
ラストの直線、ぼくは力を込めて白いテープに向かった
3時間33分4秒。
通算7回目のフルマラソンをゴールした。
通算7回目のフルマラソンをゴールした。
ネガティブスプリットで目標を立て実践を試みたマラソンの2走目。目標達成には及ばなかったけれど、今回もマラソンはマネジメントこそが大事だとつくづく感じた。
スピードとスタミナの勝負だけではなく、能力をどの場面で引き出すかという要素が無数に点在するからマラソンはおもしろい。そんな駆け引きを幾度となく垣間見たレースだった。
辛いけれど、おもしろかった。そう言える柏崎。
スピードとスタミナの勝負だけではなく、能力をどの場面で引き出すかという要素が無数に点在するからマラソンはおもしろい。そんな駆け引きを幾度となく垣間見たレースだった。
辛いけれど、おもしろかった。そう言える柏崎。
最高の環境で走らせて頂いたことに、関わったすべての皆さんに感謝します。
10/27までの走行距離・・・296km
10/27までの走行距離・・・296km
2 件のコメント:
五泉はDNSでいいやとか激しく共感で笑ってしまいました(笑)あと、いい加減な距離報告の声援も嫌ですよね~。違うと思いながらも、淡い期待を抱いてしまう自分にバカって思います
それでも、難コースのフルマラソン、見事なタイムでの完走、お疲れ様でした!
骨っ娘さんへのお返事です。
自分の走力に自信を持てずにいましたが、柏崎を走り抜けられたことで次の目標へ心置きなく進めそうです。
ところで骨っ娘さんのスイム練に興味津々。ブログ愉しみにしてます!来シーズンもOWSに向けてぼくもがん貼ります!
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