2016年5月5日木曜日

喜多方ツーリングのこと 2016.5.3

 昔から言われていることだが、人はストレスのある環境の方が能力を育てることができるという。ちょっと無理をすることで肉体的、精神的に成長を促すきっかけが得られるのだろう。

 今回の福島県喜多方への輪行、200km以上の輪行は僕にとっていつかは通らなばならない、避けて通れない事柄の一つで、期せずしてこのGWに挑むことになった。
 参加の理由は他愛のないもので、予定していたトライアスロンチームのバイク練習が天候によりキャンセルになり、その代替として開催、参加することにしたのだった。
 経験したことのない距離で、僕の身の丈に合わないことは想像できたけれど、せっかくの機会なので気負わずに臨むことにした。勝手知ったる仲間たちと一緒なのだし、無理と感じたら皆に迷惑が掛からぬようリタイヤすればいいのだから。

 ルートの関係で僕の住む近所が集合場所になった。僕は3時半に目を覚まし、いそいそと準備を始める。一通り確認を終え、悩んだ末に輪行袋を持っていくのを止めた。これが正しい判断かどうかはわからないけれど、不可抗力で必要になるよりも、自身の意思により必要になることが考えられたので、ある意味退路を断つ趣の方が大きかった。輪行袋よりチェーンカッターをもっていくことを選択した。

 AM5時予定通りスピリットZさん、KHYさんの3人で月岡から290号、赤谷経由で次の集合場所である国道49号線沿いにある津川のコンビニを目指した。約束の時間はAM7時。そこで5名と落ち合う手筈なのだ。

 赤谷へ入る途中、山から吹き降ろす「ダシの風」に吹かれ、僕らは大幅に速度を落とした。(後日、ダシの風とは、船を出す風に由来していると教えて頂いた)。それ以外は事もなく郡堺に到達、そこからしばらく続く下り坂の勢いを借りた。僕はスピリットZ、KHY列車に連なるり必死にペダルを漕いだ。そうして約束の津川にはジャストタイムで到着。あっという間の2時間、50kmの走破だった。

 この日、津川は「狐の嫁入り」の開催日だった。ところどころに宣伝告知や装飾が施されている。そんな津川のコンビニ駐車場の一角に、ペコわとさん、鉄女ママさん、ひぐまささん、H間さん、HDさんに僕ら3名を加えた総勢8名で一路、喜多方を目指す。
 ところで何故、喜多方かって?そりゃ喜多方ラーメンをみんなで食べに行くのでアリマス。お店は特に決めず、そこそこ美味しいなら、どこでもよいと言うカルーイ感じ。喜多方が目的地というより、輪行可能な距離の折り返しが場所がかの地だったと言った方が適切かもしれない。


 459号線のトレースを開始。鹿瀬から阿賀野川沿いに進み、徳沢から山あいに入ると杉木峠を超え、奥川の役場、そして龍泉寺から往路最大の難関の坂が始まる。斜度9%の表示看板を一瞥して、ひたすらペダルを漕ぐ。

 すぐにインナーローになり後がなくなる。ケイデンスを上げるべく必死だ。息が切れると変速を上げ、ダンシングで息を入れる。そんな風にハァハァゼイゼイやっているところに、横から涼しい顔で鉄女ママが坂を上ってくる。
「ハンドルに体重を乗せない〜。肘を折るぅ〜」
 言葉にちょっと節がついていて、思わず笑ってしまう。
 「サドルにも体重をかけない〜」
 シッティングのコツを教えて貰う。が、そうは上手くできない。少なくともその意識を持ってクルクルとペダルを回しながら、坂の頂点を思い描く。アスファルトに滴り落ちる汗と、荒い息遣いが世界のすべてとなる。

 AM9時半。難所を超え、残雪おびただしい飯豊連峰を望む展望スポットで小休止。清々しい天気だ。一仕事やり終えたこともあり気分は格別。ここでアクシーのA木さんが隊列に加わる。僕が坂で悶絶している横を、後方から坂を何事もないようにスイスイ上って来られ、KHYさんとお喋りしながら前を行ったところを目撃した。間違いなく、只者じゃない。


 上りがあれば必ず下りがある。HDさん、ペコわとさん、鉄女ママさん、僕のトレインで坂を下る。僕らは一瀉千里で山都を通過。通称、山都そば街道。喜多方まではもう少し。ここまでの走行距離は90kを超えていた。

 往路、上り坂のある蛇崩山をKHYさんのサポートを貰いながら頂上に着くと、目の前には喜多方の街が広がっていた。AM11時。頂上付近では向かい風が一層強く感じる。ここからはスピリットZさん、HDさん、僕で牽き合いながら、腹ごしらえの出来るお店を目指す。

 立ち寄ったお店は「上海」さん。正直に告白すると僕の喜多方ラーメンに対する期待度は高くはなかったが、注文した中華そばをひと啜りしたところ、
「!!!」
 おもわず美味いっ、と言葉が漏れてしまう。ここまでのプロセスが調味料にもなっているだろうが、間違いなく味が良い。
 「バイクを輪行袋にしまって、一杯やって電車で帰るのが正解だねぇ」とペコわとさん。
 僕は激しく同意したし、次やるなら絶対ソレ、ソレ一択だと思いつつも、帰路が憂鬱になりそうだったので、その話題には積極的に触れないようにした。


 その後、道中で見つけたナッツ由来のスイーツを堪能し、いざ復路。蛇崩山では鉄女ママの後ろに付いて、ペダリングを観察しようと思ったが、すぐに余裕はなくなってしまい、後ろを付いて行くのがやっと。このとき、幾つかの教えが僕の脳裏を過る。
 KHYさんがポツリと一言、
「基本インナーで、アウターは下りしか使わない」
 さらにゼミでのアランさんの言葉、
「坂を利用してトップスピードに入れ、それを持続する練習すると速くなるよ」
 この2つの台詞が頭の中で融合する。上りのてっぺんからアウターに入れ、思い切りペダルを漕いだ。下りの勢いにフォローの風の力を借りてスピードに乗る。気持ちいい。自重をペダルに掛ける意識を持つと、スッとケイデンスが上がった。僕を追い抜く乗用車の窓から、子供が手を振り声援を送っている。僕はその声を拾うように車を追いかける。CADD10がそれに従う。スピードに乗りどこまでも進んでいけそうに思えた。

 小休止を挟み、山都から宮古、そして津川を目指す。一瀉千里で下った山都ルートを帰りは上るのだ。前方のスピリットZさんの背中は遥か遠く、さらに坂を上るにつれてペダルは重くなっていく。

 宮古トンネルを抜けたすぐ傍らの清水で、スピリットZさんは僕らを待っていてくれた。休憩にありつき安堵した。またこの清水が格別に美味い。喉を潤し、空いたボトルに水を詰めた。出発。まだまだ上りは続く。ここも鉄女ママさんから自重をペダルに乗せるコツを聴きながら汗だくになった。


 徳沢の手前、杉木峠でKHYさんが上りで度々やっている、下ハングリップのダンシングを真似てみる。シッティングからの下ハンダンシング。普段のダンシングよりは入力が楽で自重を使うペダリングであることが判る。鉄女ママの教えと併せてスッと腑に落ちる。なんでいままでコレに気がつかなかったのだろう。

 徳沢駅で小休止。時間の流れから外れたような、ちょっとノスタルジックな駅だった。
 引き続き459号線、阿賀野川沿いを走った。スピリットZ、ぺこわとトレインについて行く。突如、スピードを上げてもがいてみたり、トンネルで声の反響を楽しんでみたりと無邪気に楽しんだ。
 スピリットZさんはもちろんだが、ペコわとさんが底知れない。まるで歯が立たない。さすが女王の異名を持つだけはあるなぁと感心する。9月の佐渡Bタイプでは完全にライバル視させて頂くのでヨロピク。ただ一つ、津川へ向かう途中、道が正しいのか何度も尋ねられたことを思うと、ちょっと方向音痴そうなので、そこに付け入る隙があるかもしれない。それとも、僕の道案内が頼りなかったせいかな?

 道筋にある縄文清水で小休止。身の丈を過ぎはしゃぎすぎてしまい、エネルギー切れを起こしかけていたのでありがたかった。そして、ここの水も十分に美味かった。そうこうしていると、狐のメイクをした女性が、水を汲みにこられたのでつかさず声を掛ける。津川での狐の嫁入り祭りを思い出す。話をしているとPM4時から交通規制のため津川で集合したメンバーの車が出せなくなることが判った。

 ここからが本領発揮。残り30分ちょっと。スピリットZさん牽く特急列車で駐車場を目指す。僕は脚が残っていないのでゆるゆるとみんなを後ろから追いかける。
 津川組は無事駐車場に到着し、事なきを得る。自走組みの僕を含めたスピリットZさん、KHYさん、HDさんの4名は国道経由で新潟へ向かうことを決め、津川組とお別れする。

 お祭りでにぎわう津川の町はどこか風情を感じ、川べりの特設会場もさることながら、地元麒麟山酒造には多くの人が集まっていた。人の流れとは反対に向かう僕らは後ろ髪を惹かれそうになった。喜多方の上海での輪行袋トークが再び脳裏をかすめる。

 津川のコンビニの一角。今朝も陣取った同じ場所で、僕らはおにぎりを始めとする炭水化物を腹にしまう。帰路は凡そ50km、2時間程度かかるだろう。それぞれ互いの帰路を報告、確認し合う。

 PM4時を回ったところで、いざ出発。牽き合いながらトレインは国道を進んだ。僕には道が下り基調だったことが大いに幸いした。それから安田に近づくにつれ追い風になったことも。

 この途中、HDさんにパンクトラブルがあったけれど、鮮やかな手さばきで難なく解消。更にその作業中にバイクメンテのプロフェッショナルが降臨するというサプライズも発生。偶然といえばそれまでだが、何かを持ち合わせた人達と一緒にいることを肌で感じた。


 安田の交差点で皆にお別れして290号から水原経由で帰路に着く。はじめての200k超えを距離を経験したせいだろう、膝から下に疲労を強く感じていた。それでも安田おろしの風に背中を押され、PM6時20分頃、無事帰宅。走行距離228km、Ave25km、13hの全工程だった。


 膝から下の疲労は今も尚色濃く残っている。その疲労に見合う分だけの収穫はあった輪行だった。さてさて、次はどこに行こうかしら。(了)

2 件のコメント:

鉄女ママ さんのコメント...

いっぱい教えちゃったんだなぁ、私www
スイムの二の舞になってしまいそう
今度はラン&スイムをご教授くださいよ~

Cyguns さんのコメント...

鉄女ママさんへお返事です。
いやいや、これからもよろしくお願いします(^人^)
6/12の前に海練やりましょうね!よろしく!