暗闇の中、周辺の景色がまるで見えないので想像していたような頂上感はなかった。僕はお鉢周りのルートをウロウロしたり、山小屋で木材の手紙を書いたりと、あれこれしているうちに約束の時間になった。
4時05分というのは日の出、つまりご来光の時間だった。雨風の中、そんなものは期待できるハズはなく、白んだ空の分厚い雲の切れ間から、わずかにオレンジ色の光が滲んでいて僕らはそれをご来光のつもりで見つめる。
ここまでを振り返ると、全くもって天候にそっぽを向かれている。日本一高いお山に居るというのに眼下に広がる景色を眺めることすら出来ない。ホントまったくついてない。
山を覆っていた闇が消え、薄明かりと共に周囲の状況が視野に入ってくる。荒涼たる山肌に蛇腹状の一本道が覗く。吉田ルートの下山道、ここを登ってきたのだと自らの軌跡を知る。上から見下ろせばこそであるが、下から見上げたならば心は折れていかもしれないという数人の意見に同意した。
山頂から下山ルートへ |
下山ルート赤土の斜面 |
8合目あたり |
7合目の山小屋&トイレ |
須走(すばしり)ルートと吉田ルートの分岐となる下江戸小屋まで隊列を組んで進む。トイレ休憩を挟んで吉田ルートへ誘導されると、ここからどうぞお好きなペースで下山してくださいと渡辺両氏に言われ俄然やる気になる。
おー!トレランじゃー!この週末ノートレであることに少しだけやましさのようなものを感じていたので、ここぞとばかりつづら折りの山道を駆け下りる。
右に折れ、左に折れるとワンセット。経路表示の看板で数えると12~3セット。地面の柔らかい所でスピードを調整しながらひたすら降る。残り6つぐらいで周囲にガスが漂い視界が遮られる。先を行く人の背中はなくなり、走りながら不安になる。
つづらを終えると起伏があったり、屋根付きの階段が現れたりと、急な坂を下りたせいで脚が棒のようになり力が入らない、膝が笑う。
ジョグで進んでいくと前日通過した記憶のある道に出た。ほっとしていると向こう側からこちらへ歩いてくる登山者とすれ違うようになった。
「おはようございます」と声を掛けながらスロージョグ。あたりはガスに包まれ昨日のスタートの風景と重なる。6時過ぎ吉田の登山口に辿りついた。
朝6時の吉田登山口 |
登りは休憩と仮眠を含め12時間、降りは2時間ちょい。この下山ランニングが僕の脆弱な両脚にとてつもないダメージを残し、この翌日から数日間歩くのが嫌になるほどの筋肉痛をもたらすことになるとは・・・。
しかるに僕の今回の富士登山は、頂きまでのプロセスとか、そこに辿りついた喜びとかは殆ど残っておらず、今も痛みが残る四頭筋の筋肉痛を招いたこの富士下山に尽きるのであった。
いろいろと体験できなかった残念な富士登山。もしかしたらまた来年も?と帰りのバスで盛り上がる我々でした。
先達の渡辺両氏、ありがとうございました。(了)
3 件のコメント:
富士山登頂おめでとうございます!
山中、視界が効かないのは、登山で一番精神的に辛いです。それが初めて行った場所ならなおさらのこと。
私も幾度か今自分はどこの山にいるのか?と問いたことがありました(笑)
次回があればぜひ晴れることをお祈りします(^^)
ゆーサーモンさんへのお返事です。
今回は今までにない良い経験になりました。
機会を作って是非登山へ出かけましょう。
よろしくお願いします。
コメントを投稿