佐渡ロングライドへの参加は実に7年ぶりだった。2016,17年と130kmに参加した以来になる。今回は佐渡を一周する210kmにエントリー。衝動的に参加したくなって申し込んだ。
しばらくこのイベントへの参加を見合わせていたが理由は明白だった。DH(ダウンヒル)バーが使用不可、つまりDHバーを利用したエアロポジションで乗れないからだった。
ぼくにとってDHバーは必須装備で下ハンと比べると上半身を前方に預けられるので圧倒的に楽な体勢が取れ速度を保つことができるのだ。
ちなみにDHバーなしの長距離走は2018年の「もてぎ7耐」が最後だ。 このときぼくは「エアDH」と称して、平坦直線で上ハンに肘を置いてあたかもDHバーを握るっているような姿勢を取った。レーシングコースという路面環境が非常に安定した場所だったので問題はなかった。
もはやDHバーなしのでの速度維持は難しい。DHバーを装着できないのはネガティブな思考を引き起こすトリガーでしかない。しかしこのたびは妥協した。自分に必要のないものはバッサリ切り捨てしまう性質だが、原点回帰とでも言おうか下ハンのエアロポジションで走ろうと決めた。なにかしらの気付きを得れるかもしれないし。宮古島以降の概ね1ヶ月間、着々と準備をした。
話は回りくどいが、要はDHバーなしで走ることが今回の趣旨である。レースではないがそこそこの時計でゴールはしたい。せっかくサービスエリア(SA)があるのだから補給も取りたい。最初は10時間ぐらいかけてのんびり走ろうと考えてたが、現状の走力を考慮して8時間台、スタートが5時半なので14時半(9時間以内)にゴールの河原田に戻ることを目標とした。
レースではなくイベントであるので気負いやプレッシャーは皆無。佐渡の2泊3日を多いに楽しもうと心は弾んだ。
5/18(土) イベント前日
お昼頃に両津港に到着。交通量の少ない新穂経由で佐和田へ向かう。荷物は普段遣いのリュックひとつ。思いのほか気温も高くそこそこ風もあり進行を妨げたが、田植えの終えた新穂の平野部を走るのは気分が良かった。新緑の季節あらゆる緑が輝いて見えるようだった。
お世話になる宿は会場まで徒歩2分とかからない戸建て平屋のワンルーム。これを1人で使って良いとのことで、早速荷物を解いてみたけれど余裕で持て余した。部屋の窓は佐渡一周線に面しており、眼前には午後の陽光に照らされた佐和田湾が広がっていた。コース沿線の建物の一角に自分が居る。こういう場所は常連層の予約で占められていてイチゲンでは無理だろうという認識があった。骨を折ってくれたYさん、本当にありがとう。
会場の河原田小学校のグラウンドで受付を済ます。協賛の出店ブースに地元の飲食店が賑やかす一方で、北朝鮮による拉致被害の署名活動を行う曽我ひとみさんを発見。迷わず署名して曽我さんと握手を交わした。報道番組などで見かける彼女そのものだったが、実際に目の当たりにしてみると、恰幅の良さとでもいおうか人物の大きさを感じた。問題の解決を訴えるブルーリボンを直に頂戴したので、ぼくは明日のジャージに着けることにした。
会場の賑わいはそこそこだったが、親近感のもてる雰囲気で居心地が良かった。強い陽射しの中時折吹く風も気持ちよかった。
夕方、薄暮の海岸線でジョギングをした。イベントの特設ステージでは鬼太鼓(おんでこ)の催し事が行われている。太鼓の音が風に運ばれるからだろうかこだまの様な余韻を残した。雲に隠れがちの夕陽が大佐渡の稜線を鮮明に映している。薄暮の自然は雄大に映り、鬼太鼓の音と佐和田湾のさざ波がほのかな寂寥を想起させた。ぼくは予定の距離をこなし翌日に備えることにした。(後編に続く)
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