目標の時計は達成できなかった。想像していたよりもずっとコース環境が厳しかった。体力だけでは押し切れない技量が問われるコース。スイムは潮流にもてあそばれ、ランは繰り返される激坂、容易に対応できない内容で自らを省みるにはよい機会だった。
ひとまず足りなかったことを後悔するのは止めにして、完走できたことを素直に喜ぼう。はじめて訪れた南の島の素晴らしい大会に全力で競技にのぞめたことを誇りに思うことにしたい。
チームメイトも無事完走。それぞれのゴールを見届けてT2の片付けにかかる。翌日の1便のフェリーを利用するので港へ、バイクを押しながら徒歩1分の場所だがバイクを預ける。バイクはレースが終えたままの状態で、13トンぐらいの物流トラックの荷台に載せられ布を被せられてしまわれた。
宿に戻るとご主人Oさん、奥様Hさんが出迎えて労ってくれた。
「パーティが終わったら、海老の天ぷら準備してるから、一緒に飲もうねー。」とご主人。
パーティー?海老天?はて??ぼくの頭では物事の順序がつかなかった。
まぁそれはさておき、ぼくらはあと片付けに取り掛かる。夕暮れの庭でコントに出てくるような大きな金盥、そう、あの銀色の大きなやつを使ってウエットスーツの潮を洗い流す。暑さをすっかり忘れてしまう心地よい海風に吹かれ、ふっと顔を上げるとサトウキビ畑の向こうに夕陽を照らす海がみえ思わず手が止まってしまう。
伊是名の海を眺めるたびに時間が止まる。心奪われる色彩や風景、そしてこのフワフワとするような高揚感。これは一体なんなんだ?今年の春、宮古島でも同じだった。夕暮れ、暑熱順化を兼ねランニングをして海岸に出た際、夕陽の反射する宮古の海を目のあたりにして息を呑んだ。このときも特別な高揚を感じた。急に暑い場所を訪れたからだよといわれればそれまでだが・・・。
ふれあいパーティーがおこなわれる体育館に訪れる。すでに宴たけなわ、夜空の下ぎっしりと並ぶ長テーブルに、空きがないぐらい選手やボランティアの皆さんが食事をとっていた。少し出遅れてしまったぼくらは芝生に腰を下ろし食事にありつく。
ソーキそば、海ぶどう、もずく(フルーツ入り)、牛汁にジューシー(混ぜご飯)ととても豪華なものだった。もちろんオリオンをはじめとするビールも。
勝手がわからないぼくは表彰式あたりで、ねぇどうしてここに居るの?宿に帰らないの?と質問をするが、皆一様に、いやいや本番はこれからだよ、まずは一献と島の酒をすすめてくる。
島の子ども達のダンス、太鼓、それから大人達のバンド演奏で会場が盛り上がる。適度に酔ったぼくは当然に踊りだす。そして、この日メインのプロバンドの演奏が始まると会場は異常な盛り上がりをみせた。皆これを待っていたのだ。
なんて楽しいんだ!レースが終わってからがお祭りみたいだった。言葉ではいい尽くせない心から楽しい時間を過ごし、ぼくらは満天の星空の下、宿まで歩いて帰った。
宿では予告どおり、海老のてんぷらにエイのから揚げが準備してあり、ぼくは島の酒をすすりながらみなと会話を楽しんだ。サンシンの演奏もあった。終わらない伊是名の夜は更けていくのであった・・・。
3回に分けて記したが、ぼくの初伊是名は概ねこんなかんじだ。可能ならば来年も参加したい。’25年は連休中日の11/23(日)開催と発表されている。きっと新潟はめっきり寒くなっている頃だろう。暑熱順化を考えて、更なる前入りを腕組みしながら考える自分がいるのであった。
伊是名島の皆さんをはじめ、この大会に関わった全ての人びとに心から感謝をのべたいと思う。本当にありがとうございました!(了)
フェリーからのぞむ伊是名島 |
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